前回は描写力の精度を上げてゆく、というテーマでした。しかし、動いた列車に対して検証はできずじまいでしたので今回は仮説を立てて検証してみます!使用したのは3600万画素のカメラです。
《仮説》
1.高速シャッターを用いる
2.F値(絞り)を考える
3.クロップアップを有効的に使う(×1.2やDXモード)
これら上記の要素を組み合わせて当倍でも鑑賞できる鉄道写真を目指しましょう。[1.高速シャッター]
以前の記事にあるようにシャッタースピードを上げた場合でも、理論上は動いている被写体はブレます。
さらに画素数が上がるほど、細かい部分まで拡大が出来るので被写体ブレが顕著に現れます。ですが今回は高速シャッターの可能性を探るために、設定の上限である1/8000秒に設定をして検証を行います。
[2.F値を考える]
ご存知のとおり、F値(絞り)の数値が上がるほど「被写界深度」と「ピント深度」は深くなります。
被写界深度とはピントがあっているように見える範囲・ピント深度は合焦部の先鋭さを意味します。ただしF値に関しては回折現象が発生するため注意が必要です。極端にF22やF32で撮影をすると描写力が低下するのです。レンズやセンサー(フォーマット)の組み合わせによって描写力のピークは異なるため、一律にどの値が最適と言うことはできません。経験上フルサイズではF5.6~F8.0付近にピークがくることが多いです。
[3.クロップアップの有効活用]
みなさんはクロップアップをどの場面で使いますか?
もう少しアップに撮りたいときのエクステンダーの役割でしょうか。この使い方が一般的ですね。
同じ焦点距離の場合はセンサーサイズ(フォーマット)が小さいほど、写る範囲は狭くなってゆきます。
写る範囲が狭いということは望遠レンズと同じです。フルサイズ・APSサイズ両方のカメラをお持ちの方は同じレンズを使っているのに、画角(写る範囲)が違うという経験はお持ちですか? これのことです。
代表的な規格を比較すると、フルサイズ>APSサイズ>フォーサーズ
例えば同一レンズ:[フルサイズの50mm]をAPSサイズカメラ(×1.5)に装着した場合は75mm前後に、フォーサーズ(×2.0)であれば100mmの画角へと変化するのです。今回はこの現象を利用し逆のことを考えます。
フルサイズの50mmと同じ画角を得るためにはAPSで約35mm、フォーサーズは25mmあれば充分なのです。
写真のベテランなら既にお解りいただけると思いますが、
広角レンズほど同じ絞りの値で被写界深度を稼ぐことが出来るのです。
さらにセンサーが小さいほど描写力のピークは明るい絞り側へとシフトしてゆくため、自然とシャッタースピードも稼げるという理論です。
今回は裏技として被写界深度を保ちながら、シャッタースピードを稼ぐためこの性質を利用します。
設定は簡単、画角を決め→カメラをクロップアップに設定→あらかじめ決めた画角へと戻す。これで準備はOKです!実際問題として画素数は減ってしまいますが、編成写真を撮るのならば1000万画素もあれば充分と考えましょう。
《検証》
長々と仮説が続いてしまいましたが、検証です。
選んだ被写体は東武鉄道の200系です。今の特急にはないようなどこか昭和チックなデザインいいですね(笑) ここは桐生に近い撮影ポイント、時速は70km/hくらいで走ってくる区間です。ここで仮説の検証をしてみましょう!!
ー在来線編ー
① シャッタースピード1/8000秒
② F5.6・50mm単焦点
③ クロップアップ(×1.2モード) 以上の条件で撮影です!
オーソドックスな編成写真ですが、この形式の車体形状を考慮するとやはり標準~中望遠系がベストでしょう。例によってこの画像も等倍にアップ!!
△これです、この精度が欲しかったのです。線路の周りに固められている砂利(バラスト)と動いている特急が同じ描写で再現されています。ここまでくれば車両は止まっていると判断してもよいレベルでしょう。
「なーんだ、在来線なんて余裕ジャーン」と思ってしまったので(?) 次は新幹線で検証です。さらに少しだけハードルを上げての挑戦です。果たして・・・
ー新幹線編ー
① シャッタースピード 1/8000秒
② F6.3・40mm
③ フルサイズ・36MP
△きましたっ!こちらも動いているものと静止したものの比較です。前回の記事同様に輪郭を保ったまま描写されています。頑張りました!!
今回のはどちらの検証でもよい成果が得られました。今後はこのデータを基にさらにブラッシュアップをはかってゆきます。長々と書いてしまいましたが、今日はここまでっ!
えんまさ
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